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外は雨が降っている。

今日はとても特別な日だった。午前中、少し早く起きて整形外科へ。装具屋さんに作ってもらったインソールを受け取る日だった。待合室では大人しかいないのに、大きな画面にアンパンマンが流れている。知らないキャラクターと食パンマンが映っていた。しばらくするとニュースの画面になっていたので、今って午前中にアンパンマンを放映したりしているのだろうか。家にテレビはあるのに一切つけないから、世の中の番組事情を知らないことに気がつく。

 

赤羽からきている、装具屋さんに名前を呼ばれる。会うのは二回目で、足の事情も知ってくれているはずなのだが、「階段は大丈夫?」と聞かれた。整形外科では一般的な会話の流れなのかなと思うが、どんな具合でも整形外科にかかっている以上、こうして気にかけてもらえるのだと思うとありがたく、うれしかった。大丈夫です、と一緒に階段を降りた。「今日は混み合っているから、ここでもいいかな?」と最初通路の丸椅子で試し履きをする流れになったのだけど、この通路も他の患者さんが通るし...と別の病院職員の人から声がかかり、「15分くらいならこっちの診察室使って大丈夫です」というスタッフ同士の会話がなされ、その部屋に通された。

 

履いていたスニーカーを脱ぎ、そのスニーカーにインソールを入れてもらう。2cmの脚長差で、ひとまずは1cmの補高をしてもらう予定だったのだが、作っている過程で1cm厚みがあるものになったらしい。つま先の方が薄くて、かかとの方が厚いから、少し脱げやすい感じになるかも、ハイカットはあまり履かないのかな?と言われながら履いてみる。確かに脱げやすいかもと思ったのは一瞬で、「わ!!!!高い!!安定してる!!!」がとにかくの印象だった。先入観や期待、新しいものを身に着けるときの高揚感が先立っていたのかもしれないけれど、良い印象を強く感じる。片足で立っても、(今までぐらついていたのが)安定するし、すごく良いのではないか。最近の、ちょっと暗くて靄がかかったような心が一気に晴れて、楽しい気持ちになった。装具屋さんが、ちょっとみてみるね、と腰と肩に手をあて、「骨盤の高さがちょうどよくなった」と言ってくれたので更にテンションがあがる。思っていた以上に平行になったらしく、よくこれまで何もしないで生きてきたね、のような労いの言葉ももらった。

「仕事は夜遅いの?」と聞かれ、なんで知ってるんだろうと思いながら「はい」と答えると、電話が寝起きだったからと言われる。そうだ、昨日朝電話をもらったんだった。最初にともちゃんから電話があって、「さとちゃん寝てた?おやすみなさいね〜」といつもの調子で言われて、その後装具屋さんの電話で目が覚めて、「寝てたのかな?」と結構フランクに言われたのが昨日。寝起きの声って、気をつけてもどうしてバレるんだろう、と思った。寝起きの声が寝起きじゃなくなるまでって、どのくらいの時間が必要なのかな。

お金を払って、領収書を受け取り、保険で7割は戻ってくることの説明を受けた。

病院を出て歩いてみると、少し違和感がでてきて、真っ直ぐ歩くことができているか不安になる。でもプロにみてもらったのだし、この装具を信じてこれから共に生活していこうと、いつもながらに大袈裟な気持ちで家に帰った。

 

仕事、それから通院もして、夜はIさんとご飯を食べに行った。Iさんにも靴の話をした。歩き方がいつもと違うとは言われなかったので恐らくまっすぐ歩くことができているのだろうけど、ちょっと大きな鏡とかあったら確認したいなとおもった。


駒場東大前の定食屋さんで、マグロの定食を食べる。おにぎりの具はなにが好きかとか、付き合いたての人間同士がするような会話を相席で繰り広げてしまい、でも広げるしかなく、少しだけ恥ずかしくなったけれど楽しい夜だった。